昔から労働集約産業と位置づけられている繊維産業は、人件費の高い先進国から安価な後進国へとバトンタッチされていく典型的な産業の一つです。
過去、ブラジルは安い人件費を背景にして、繊維産業は国内の景気を支える基幹産業としての役割を担ってきましたが、ここ10年、インフレの収束や為替相場の安定に伴い、労務費を初めとした諸経費の高騰に直面して国際競争力は失墜、衰退の兆しすら呈しています。
因みに、2003年度の繊維製品・既製服の輸入は1億ドル程度であったものが、10年後の2013年には、その23倍を超える23億7500万ドルに膨れ上がりました。
輸入先は中国が圧倒的に多く、全体の75%を占めていますが、そうした状況から、サンパウロ州内だけでも、ここ5年間に121社の繊維企業(特に縫製会社)が撤退あるいは倒産し、国内繊維産業は大きな苦境に立たされています。
近年、ブラジル経済の安定と共に、失業率が低下して国民の可処分所得は大幅に増加、不動産、自動車、家電製品など好調な売れ行きを呈し、国内外へのバカンス旅行も活発となっています。
ブラジルの繊維産業は、もはや構造不況業種と言っても過言ではなく、一昔前の日本を彷彿させます。
その意味において、ブラジルは、後進国あるいは新興国というよりも中進国と言うのが妥当かもしれません。
以上 次回の"ブラジルからの報告"をお楽しみに!!